絵画と戦争『黄金のアデ―レ』
もう一作は『黄金のアデ―レ 名画の帰還』
クリムトが描いた「アデ―レ・ブロッホ・バウアーの肖像」もその一つ
金銀箔をふんだんに使ったまばゆいばかりの肖像画は
この絵のモデル、アデ―レの姪にあたるマリアが
亡命の地アメリカで絵画の返還を求める裁判をおこしたのです。
オーストリアがこの絵を手放すわけがない!
手に入れた手段はどうあれ、今や国民的絵画です。
とうてい勝てる見込みのない裁判でしたが、
しかしマリアは、粘り強く勝ち取りました。
今この絵はニューヨークのノイエ・ガレリエに展示されています。
マリアを演じたヘレン・ミレン
ユダヤ人女性の威厳と悲しみ、頑固さとユーモア、、、
見事に!この役を演じていました。
この映画は本当に様々な事を伝えてきましたが、
わたしがとても印象深かったのは
マリアの結婚披露宴で親族が踊ったダンスのシーン
メジンケは末っ子の結婚式で母親が踊るユダヤ伝統のダンス。
マリアの叔母アデ―レ役は絶世の美女でしたが、
母親役は身体ががっしりと大きく、父親より頭一つ以上も背が高く、
さしたる美女でもない女優さんが演じていました。
ところがこのダンスのシーンで、
彼女は驚くべき身体能力を発揮し、跳ぶように舞い
パワフルなダンスで一族を踊りの輪に巻きこむのです。
喜びの絶頂にふさわしい、
素晴らしく躍動感のあるダイナミックなシーンでした。
ああ、このための女優さんだったのだ!といたく得心しました。
母として仕事をやり終えた誇らしさと安堵、
メジンケは母親の晴れ舞台でもあるのです。
このあと戦況はどんどん厳しくなり
マリアの周辺に軍靴の音が迫ってきます。
ヒットラーは若き頃画家を志し、
美術大学を受験し失敗したのをご存知でしたか?
もし、彼が芸術家になって
あの狂気のエネルギーをアートの世界に注ぎ込んでいたら
歴史は違っていたのだろうか・・・
「黄金のアデ―レ 名画の帰還」
2015年、わたしが勝手に選ぶNo1です~(^o^)丿